生産者と育んできた高千穂郷の「椎茸」で、世界に挑む
この企業について
600を超える生産者から託される乾椎茸
椎茸の一大産地として知られる宮崎県。なかでも2年ほどの時間をかけて自然の中で育てる「原木栽培」の乾椎茸(ほししいたけ)の生産が盛んで、生産量は全国で第2位(農林水産省、2020年)を誇っています。
高千穂町にある株式会社杉本商店は、地元の生産者から乾椎茸を直接仕入れて加工・販売しています。仕入れた乾椎茸はうまみを引き出すために遠赤外線を使って加熱乾燥させ、その後一つひとつ手作業で検品や選別をおこないます。袋詰めされた商品はネットショップなどで販売され全国のお客さまに届けられます。
杉本商店が仕入れている椎茸は高千穂町・五ヶ瀬町・日之影町のほか椎葉村や諸塚村、熊本県の山都町や高森町などで栽培されたもので、取引をしている生産者は600を超えます。杉本商店は生産者の椎茸を買い続けることこそが自分たちの使命だと考えていて、持ち込まれる乾椎茸は量や大きさに関係なくすべて買い取るようにしています。そのスタンスは1959年の創業から60年以上たった今も変わらず、生産者を支えるための商売を貫いています。
海外に広がりつつあるJAPANESE SHIITAKE
椎茸は世界でも「SHIITAKE」の名称でたくさんの人に食されていますが、日本産のものは少なく、海外で流通している椎茸のほとんどが中国産です。そうした中で、杉本商店は海外にも日本の椎茸を届けようとネットショップなどで世界に向けて販売しています。
アメリカでは乾椎茸を粉末状にした「椎茸粉」が人気で、うま味調味料として販売されています。肉に振りかけるとうまみが増すという特長があり、バーベキュー文化のあるアメリカで特に受け入れられています。
国産の乾椎茸は味や栄養の点だけでなく、生産される過程についても海外で評価され始めています。原木栽培に使用するクヌギの木は切り株から芽が出て自然に再生することから、自然を壊さない循環する農業として関心を集めているのです。また杉本商店では無農薬で育てた乾椎茸を扱っているため、ヨーロッパなどでも健康意識の高い人や菜食中心の人たちから特に喜ばれています。
近年は動画で海外に向けたPRを積極的に行いオンラインでの商談も増えているため、さらに多くの国や地域に輸出できる可能性が高まっています。
生産者を支えるための新たな取り組み
農家の高齢化や後継者不足が課題視されていますが、椎茸の生産者についても同じ状況があります。そのような中で生産者の作業負担を減らそうと、杉本商店では力仕事を助けるアシストスーツを使った実験に取り組んでいます。アシストスーツは介護の分野でも開発が進められている人工筋肉の技術を用いたもので、農作業にも活用できるのではないかと注目されています。杉本商店では20軒の椎茸農家にアシストスーツを着用してもらい、使い心地や重い荷物の運搬で効果を発揮できるかを確認してもらっています。多くの生産者は「できる限り長く仕事を続けたい」と考えていて、その思いに応えるため、東京の会社や宮崎大学などと協力しながら実用化に向けた研究を進めています。
こうした杉本商店のさまざまな取り組みは、新しい担い手が増えることにもつながるのではないかと期待されています。
企業データ
社名 | 株式会社杉本商店 |
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本社所在地 | 西臼杵郡高千穂町三田井458-28 |
設立 | 1970年7月 |