飲食店勤務を経て、家業である洋菓子店に就職
どんな学生生活を送ってきましたか?
農業高校の生産流通科では、自分たちで商品をつくって売るまでの過程を学びました。野菜、果物、果汁の3種類をつくり、街中に出て路上販売をしたこともあります。高校生が売っていると「頑張ってるね」と足を止めてくれる方も多く、自分たちでつくったものを実際に買っていただけるとうれしかったですね。
接客することに面白さを感じ、高校卒業後は宮崎県内の短期大学に進学し、ホテルや観光業について学びました。
短大時代はカフェや居酒屋など飲食店を中心にいろんなお店でアルバイトをしました。接客の他に料理の仕込みなど簡単なキッチン業務を任されることもあって、バイトを通して料理の楽しさも覚えました。
現在のお仕事について教えてください。
短大を出て飲食店などに就職したのち、現在は実家が経営する洋菓子店、パティスリーヒロヤに勤務しています。接客をメインに、電話対応や商品の袋詰めなどを担当しています。
もともとは私の祖父が始めた店で、父が2代目になります。母も父と一緒にこの店でパティシエとして働いています。
学生時代からさまざまな飲食店で働くうちに、家族がつくり上げてきたお店に興味が湧きました。父や母が祖父から受け継いできたケーキやお菓子のレシピをこの先に残していきたい。そう思って一から洋菓子づくりを学ぶため、数ヶ月前に就職しました。
接客や調理だけではない。入ってみて気付いた洋菓子店の世界
実際に働いてみていかがですか?
ショーケースに並んだケーキ、甘い香りに包まれた店内。幼いころから慣れ親しんだ光景はどこかキラキラして見えていたんですが、実際に働いてみると華やかな面だけではないんだなと気付きました。
生菓子以外に、看板商品であるチーズ菓子の「チータル」など物産店に卸している商品もいくつかあります。そういった商品の袋詰めや箱詰めは、従業員が接客の合間を縫って一つひとつ手作業でおこなっているんです。
私の中では飲食店というと接客や調理のイメージが強かったので、黙々と商品と向き合う仕事はギャップに感じたところでした。
飲食業のやりがいや楽しさとは?
人と話すことが好きなので、接客をする中でお客さまと会話できることに楽しさを感じます。常連さんと仲良くなり私の名前を覚えていただいて名前で呼んでくださったり、些細なことでも頼ってくださるとうれしいですし、この仕事をしてて良かったなと思いますね。
このお店も祖父の代から地域のみなさまに愛されてきました。常連さんも多いので、これから仕事に慣れていって、そういった方々と交流していくのを楽しみにしています。
将来の方向性をイメージしておけば、遠回りしないですむ
今後の夢や目標を教えてください。
来月からいよいよ製造の現場へ入ることになっています。まずは両親のもとで、お菓子づくりの基礎から学んでいく予定です。
お店のレシピはすべて手書きで何冊もあるそうです。私もまだちゃんと見せてもらったことがないので、どんな内容なのか今からワクワクしています。
あとはお菓子づくりの体験教室も再開できればと考えています。コロナ禍になる前は地元の小学生に来てもらって、みんなでクッキーを焼いたりしていたんです。私の母がそういうイベントが好きで、今後は実際に商品をつくるところも見学できるといいねと話しています。お客さまに喜んでいただけるお店づくりを私も手伝っていきたいです。
最終的な目標は祖父や両親が大事に守ってきたレシピを私も受け継いでいくことです。まだ先のことですが、どんなふうにレシピを残していくのかというところも少しずつ考え始めています。
今の店のスタイルを守り続ける以外にも、たとえばパティスリーヒロヤのケーキが食べられるカフェなど、店の味をもっと広めていく方法はいろいろとありそうです。
最後に社会人として、高校生にアドバイスをお願いします!
今は受け継がれてきたレシピを残したいという思いがありますが、自分自身では結構遠回りしたなと思っていて。短大も「食」とは関係のない学科でしたし、新卒で入った会社も実は飲食業界とは関係ありませんでした。とりあえず、そのときに好きなことをしようと思っていました。
もちろんいろんな経験ができたからこそ、今の仕事にたどり着いたのだと思います。でも学生のうちからなんとなくでも将来のことがイメージできていれば、知識を身に付けたり資格を取ったりと、夢や目標につながる行動が取れたのかなと感じています。
だから高校生のみなさんには、ある程度は将来の方向性を決めて、そこに向けてどんな勉強が必要か、どんな資格や免許があるのかなどを調べておくことをおすすめします。スムーズにいくことだけがすべてではないと思いますが、みなさんには回り道し過ぎず、夢や目標に進んでいってほしいです。