杉が成長するまでの営みの出発点を担う仕事
現在のお仕事内容から聞かせてください。
耳川広域森林組合では、宮崎県北部に流れる耳川流域の森林管理や木材の供給をおこなっています。自分は森林管理の中でも苗木の植え付けやメンテナンスをする造林を担当しており、普段は山に入って作業をおこなっています。
具体的には、春は杉の苗木の植え付け、夏は苗の成長を促すために周りの雑草を刈る「下刈り」をおこないます。秋から冬は「地ごしらえ」といって、次の植え付けに向けて、伐採のときに発生した木の幹や枝を片付けたり、整理をしたりします。丁寧に現場を整理しておくことで、次の作業に向けての準備をするイメージです。
この仕事に就いた経緯を聞かせてください。
日向工業高等学校に通っているときは、もともと県外で就職したいと考えていました。一度宮崎を離れて、都会で暮らしてみたいというのが理由でした。
ただ、あるとき友人から耳川広域森林組合で働いてみないか、という誘いを受けました。誘いを受けた当初は仕事の内容もイメージできず迷ったのですが、実際に話を聞いてみると、だんだんと地元で働いてみる選択も悪くないと考え、就職を決めました。
実際に働いてみてイメージはいかがでしたか?
働き始めた当初は、体力が必要な仕事なので大変でした。山は急斜面の登り下りが続きますし、夏は暑くて冬は寒い(笑)
それでも4年目なので、今はそういった環境にもずいぶん慣れてきました。杉の木が出荷できる段階に成長するまでには、40~50年の時間がかかります。そういった長い営みの出発点に関わっていると考えると、この仕事への誇りが生まれてきますね。
苗が成長する姿は喜びを感じる。山の中で食べる食事は格別 ー
仕事をしていてやりがいを感じる瞬間はありますか?
やはり自分たちが植えた苗が成長していく姿を見るとうれしくなります。初めは小さな苗だったのが、段々と丈を伸ばして少しずつ木へと成長していく。その過程をすぐ近くで見守れるのはこの仕事の喜びだと思います。
それから、現場で食べるご飯が本当においしい。休憩時間は山の中で昼食を取るのですが、周囲を自然に囲まれた環境での食事は格別です。空気もきれいですし、体力を消耗しているので本当においしく感じます。絶景を眺めながらひと息つく時間は、この仕事ならではの特権かもしれませんね。
プライベートの時間はどのように過ごしていますか?
自分は洋服が好きなので、休日は洋服屋さんを訪れるのが楽しみになっています。近場のお店にも行きますが、時間があれば車で宮崎市内まで足を伸ばしたりしています。
休日はあえて山から離れることを意識しています。仕事のときはずっと山に囲まれているので、お休みの日はそこから離れて街中や海を訪れています。そうすることで、うまく仕事とプライベートのオンとオフを切り替えている。今はそこのバランスが整っているので、充実した生活につながっていますね。
学生時代に身に付けた知識や経験は将来の選択肢を広げてくれる
これからの目標を聞かせてください。
将来は班長を任されるのが目標です。今お世話になっている班長さんをとても尊敬していて、仕事への意識も高く、コミュニケーションを取ることで働きやすい空気を作ってくれます。
自分も将来はそういった立場でみんなをまとめたり、リーダーシップを発揮できるような人材に成長していきたいですね。ただ、なりたいと希望したからなれるわけではない。そこは日々の仕事への取り組み方や、信頼が重要になってくると思っています。近道はないので、まずはその日その日の仕事に目標を立てて、丁寧に作業に取り組んでいきたいです。
最後に高校生へのメッセージをお願いします。
ありきたりな回答になってしまうのですが、勉強を頑張っておくことが大切だと、社会人になって改めて感じています。
自分は山で作業をする仕事なので体力があるうちは大丈夫ですが、いつかは現場での仕事が体力的に難しくなる時期がきます。そういったときに、学生時代に身に付けた知識だったり資格が生きてくる。それから、就職先や進学先を選ぶときの選択肢が広がるのも、勉強に取り組む意義だと思います。このメッセージを読んでくださる皆さんにはぜひ頑張ってもらいたいですね。
それからいろいろな環境や体験に触れることも大切だと思います。自分は地元で働くことを選びましたが、たとえば県外の学校に進学してから宮崎に戻ってくるのも選択肢ですし、県外で一度働いてからまた戻ってくるのも一つの手段です。若いからこそ、広い視野でいろいろな可能性を探ってみてください。