
「食が好き」という原点を大切にしたら、自分のやりたいことが見えてきた。
管理栄養士を志したきっかけはどんなことですか?

食事や栄養に興味を持ったきっかけは、子どものころの原体験。糖尿病の祖父のために、祖母が毎日の食事を管理していて、病院からもらった献立がキッチンに貼ってあるのをいつも眺めていたんです。メニューだけでなくカロリーや糖質、塩分量などが細かく決めてあって、これはどういう意味なんだろう?と。当時は説明を聞いてもピンと来なかったのですが、とにかくおじいちゃんの健康をおばあちゃんが支えているらしいことはわかって(笑)。「おばあちゃんすごいなあ」と感じたことが、いま思えば管理栄養士を目指した最初の一歩だったような気がします。
高校時代はどんな生活を送っていましたか?
小さいころからお菓子づくりが趣味で、一人で黙々と生地をこねたり、クッキーを焼いている時間が好きでした。バレンタインのチョコレートも手作りして友達同士で交換したり。おいしいものを食べたい気持ちもありますが、つくること自体が楽しくて、誰に頼まれたわけでもないのにひたすらつくり続けてました。学校では友達に誘われて茶道部に入部し、作法や食文化の歴史についても勉強。季節の移り変わりを五感で味わうために、マナーやルールを洗練させてきたというのが不思議でおもしろかったですね。社会人になってからは、なかなか時間の余裕がなくてつくっていないのですが、また再開したいと思っています。
漠然としていたイメージが、先輩との会話で具体的な将来像に。
はっきりと管理栄養士の道を選んだのはいつごろですか?

高校1年生か2年生のときに、いろいろな業界で働いている先輩たちが学校に来られて、自分の仕事や業界について語ってくれる行事があったんです。入学シーズンにある新1年生向けの「部活紹介」のような感じで。そこで病院で働いている管理栄養士の先輩からお話を聞き、興味を持ちました。私たちの考える食事とはまったく違う、治療や入院生活のための食事があること。さまざまな制約がある中で、なんとか食事を有意義なものにしようと考え続けている人がいること。もともと関心のあった「食」というテーマと、困っている人の役に立ちたいという気持ち、さらにおばあちゃんの思い出がつながり、挑戦してみようと心が決まりました。
現在のお仕事に就くまでの経緯を教えてください。
大学の実習で、病院と介護施設それぞれの仕事を体験。身体機能の回復をサポートすることに特化した病院食に対し、介護食はもう少し自由度が高く、日々の楽しみを提供する役割を持っていることから、高齢者向けの施設で働きたいと考えるようになりました。どちらも大切な食事ですが、食べる人の希望に寄り添える点が私にとって魅力的だったんです。
その後、管理栄養士の国家試験勉強を続けながら、地元・都城市で就職活動をする中で豊の里を知りました。まさに自分の求めていた条件の職場だったことから、応募し、面接を受け、採用していただいたのが入職までの流れです。
ご利用者一人ひとりに合わせた栄養マネジメントは、長期ケアに不可欠の仕事。
施設ではどんなお仕事をされているのでしょうか?

ご利用者の体調を踏まえた栄養ケアプランの策定、食事量や栄養状態の管理、ご家族へのご説明など、栄養マネジメント全般を担当しています。また、同じメニューでもご利用者ごとに好きな食べ方やこだわりがあるので、できるだけ希望に添えるよう個別に対応。噛む力や飲み込む力が低下している方のために食材を細かく刻んで食べやすいように調整したり、なるべく自分で食べたい方のために使いやすい食器を用意するなど、ひとつひとつの課題と向き合い、改善に向けて取り組んでいます。「こんな場合はこうしたら食べてくれるかも?」という現場のノウハウが無数にあり、日々ご利用者や先輩たちから学ばせてもらっています。
管理栄養士としてやりがいを感じる瞬間は?
「きょうは全部食べられた」「美味しかった」そんな言葉をかけてもらったときは本当にうれしいですね。ふだんより食事の量が増えた、自分で食べられるようになった、食生活が改善して体調が良くなった、といった仕事の成果も見えやすく、本当に意義のある仕事をしていると思っています。目標はすべてのご利用者に食事を楽しんでいただき、健康な暮らしの一助となること。ちょっとした工夫やアイデアでご利用者の食生活は大きく変わるので、コミュニケーションの中からヒントを見つける観察力を身につけていきたいです。
高校生に向けたメッセージをおねがいします。
自分が何をやりたいのか、どんな社会人になりたいのか。決断を急ぐべきとは言いませんが、一度「この道でいこう」と決めてしまえば、そこにたっぷり時間を使えることも事実。スタートダッシュを決める意味でも、なるべく早いうちからいろいろな可能性を想像し、先輩やまわりの大人に相談してみてください。そして本当に大切なのは、途中であきらめないこと。一歩ずつ夢に近付いていると信じて、努力を続けてみてください。ちなみに余談ですが、私の妹も管理栄養士になりました。いつか一緒に働けたらと思いながら、切磋琢磨しています。