
多分野に興味が広がっていく中で、本当にやりたかった道を選択
看護師という職業を選んだ理由を教えてください。

小さいころに通っていた耳鼻科で、診察を怖がる私にあたたかく接してくれた看護師さんに憧れたことが医療の道を志したきっかけです。さまざまな不安を抱えた患者さんに寄り添い、前向きな気持ちにさせる存在。その姿がとてもかっこよく見えたんです。実は途中で天文学や宇宙開発の仕事に興味を持ったり、パティシエに挑戦してみようかと悩んだりもしましたが、高校の進学先を選ぶタイミングで自分の本当にやりたいことを再確認し、「やっぱり看護師になろう」と決意しました。
まったく違う道も検討されていたんですね。
そうなんです。看護師という目標とは別に、星座や神話などが大好きで、そこからプラネタリウムや宇宙に関する職業を探したこともありました。残念ながら学力の面であきらめてしまいましたが(笑)、現在は趣味として星や夜空の写真撮影を続けています。こちらはこちらで奥が深く、撮影スポットを探して山に登ったり、カメラの使い方を勉強したり、プライベートの重要な楽しみになっています。
それでは、現在のお仕事に就くまでの経緯を教えてください。
看護科を卒業後は、奨学制度の規約で京都の総合病院に入職しました。新人看護師はきっと誰もが経験することだと思いますが、医療の現場は想像以上にハードでしたね。学校で教わった知識だけでは、まだまだ足りない。何度も練習してきたことが患者さんを相手にするとうまくできない。勘違いと思い込みでミスを連発する。先輩たちについていけず、悔し涙を流したことも一度や二度ではありません。でもここで「確認」と「報連相」の大切さを徹底的に教えられたことが、現在とても役立っていると感じます。
4年間の勤務を経て、地元宮崎にUターン。患者さん一人ひとりと向き合える職場を探す中で出会ったのがライフクリニックです。面接の段階から「よく来てくれたね!」と、すごい歓迎ムードで、とてもうれしかったことをおぼえています。
はじめて知るプロの現場。経験を積むことで自分の引き出しを増やしていく。
クリニックではどんな業務を担当されていますか?

主に地域の入院患者さんに対する治療及び精神的サポートです。毎日のバイタルチェックや点滴、食事・排泄の介助、服薬管理、ドクターへの申し送りといった通常業務のほか、高齢の方が多いため緩和ケアや看取りなどにも関わっています。
どんなときにやりがいを感じますか?
認知症の患者さんはコミュニケーション機能が低下していて、話せない方や意思表示ができない方も多いのですが、話しかけることで笑顔を見せてくれたり、ときには「お腹がすいた」「何か飲みたい」なんて要求を伝えてくれることがあるんです。それがとても嬉しくて。このクリニックで働くようになり、「おじいちゃんおばあちゃんと関わることが好き」という自分の新たな一面を発見しました。特に髪を洗ってあげることが好きで、気持ち良さそうな顔を見ると私も、満ち足りた気持ちになりますね。
お仕事の中で大切にしているのはどんなことですか?
患者さんと関わっている間、こちらから積極的に話しかけることです。目立った反応がなくても、私たちの声を聞いたり表情を見ることは少なからず良い刺激になっているはずですので、わずかな時間でも丁寧に関わることを心がけています。また、ケアはチームワークで行うものなので、スタッフ同士での情報共有や各作業については常に注意深く確認しています。
これまでの自分と、これからの自分。看護師としてさらに成長していくために。
休日の過ごし方を教えてください。

さきほども少しお話ししましたが、カメラが趣味で、特に星の撮影にハマっています。もともと星を見たり宇宙について調べることが好きだったんですが、著名なクリエイターの写真作品に出会って衝撃を受け、自分でも撮影してみたいと思うようになったんです。レンズを通して見る雲や流星は本当に美しく、働く上でのモチベーションとなっています。撮影に集中するために仕事をがんばり、楽しく働くためにカメラを構える。今はちょうどいいサイクルとバランスを維持できてますね。
高校時代にもっとがんばっておけばよかった、と感じることはありますか?
高齢者のケアに関わっているので、心臓疾患や循環器系についてもっと早くから勉強しておけばよかったな、とは思います。ただそれは今だから言えることで、高校生のときに「将来何科で働きたい?」と聞かれても答えられなかったはず。転職して担当科は変わりましたが、看護科で勉強・練習したことも、新人時代に経験したことも、すべて現在進行形で役に立っています。
今後の目標と、高校生に向けたメッセージをおねがいします。
患者さんとしっかり向き合い、より良い医療サービスを提供していくことが目標。まだまだ勉強の毎日で、「こんな看護師になりたい」「こんなスキルを身につけたい」という具体的なビジョンを模索している最中です。まずは認知症ケアで一人前になることが最優先。医療現場で求められる役割をしっかり果たしていきたいです。
高校生のみなさんに伝えたいのは、「15歳で人生を決めなくていいよ」ということです。憧れの職業に就いた後でもっと魅力を感じる仕事に出会うかもしれないし、働く中でまったく違う新しい目標ができるかもしれない。そこで「ああ、最初からあの道を選んでいれば」なんて後悔をしても意味がないんです。今できることを一生懸命楽しんでいれば、きっと素敵な人生になると思います。国家試験に合格したとき先生や同級生から「奇跡だ!」と驚かれた私に、あまり偉そうなことは言えないのですが(笑)。