「グラブ職人になりたい」ということを周りにも伝え行動
高校を卒業してグラブ職人になるまでの経緯を教えてください
高校では野球部に所属して、3年生ではキャプテンを任せてもらいました。高校1 年生のときから、野球部の監督など周りには「グラブ職人になりたい」という夢を伝えていて。
自分でもグラブ職人になることのできる会社を調べ、手紙を送ったり、見学に訪れたりしていました。ただ大手だと、製造工程の最初から最後まで携わることができない。
グラブ職人になりたいと思ったのは、自分自身の手でグラブを作りたいという思いがあったから。迷っているときに監督が紹介してくれたのが、ボールパークドットコムでした。
学校を訪問した社長と専務から「グラブ職人の第1号として育てていきたい」という思いをお聞きして、入社を決めました。
正直、宮崎でグラブ職人になれるとは思っていませんでした。1 年目からグラブを縫うなど、大きな実務経験を積ませてもらえています。
グラブ職人になりたいと思ったきっかけは?
もともとグラブが好きで、デザインのカッコ良さとかの好みでいろんな種類を買ってもらっていました。職人になりたいと思ったきっかけになったのは、小学校6年生のころにテレビで見た「型付け職人」の特集です。
硬くてすぐには使いづらい新品のグラブを、手になじむようクセ付けする工程について職人さんが話すなかで、グラブを作る工程ではもっと奥が深いということをおっしゃっていたんです。
そこでグラブを作る仕事もあるということを知って、グラブを作りたいと思うようになりました。
信頼関係につながる職人として磨き上げた腕と知識
現在のお仕事のやりがいを教えてください
お客さまのグラブをオーダーそのままではなく、自分なりに解釈して作り、納品して何ヶ月か経った後に「本当に良いグラブだね」という声をいただけることです。
プロ野球選手のグラブも作らせてもらっていて、選手の試合を見ると、伝えてもらった内容とプレイスタイルが異なることがあります。
注目しているのが、選手のグラブの触り方・しぐさ・動きなど。小指を曲げるしぐさだけでも、小指のほうが気持ち悪いというか、納得いっていない部分があると感じることができます。
客観的に選手の動きを見て、こういう型のグラブのほうが合っているのではないかと提案することで、いろいろと意見を言ってもらえる信頼関係につながっていると感じています。
ボールパークドットコムならではの魅力はどんなところですか?
まだ3年目なんですけど、責任ある仕事を任せてもらえ、経験を積めることです。
ミスをしても会社がカバーするなど全面的にバックアップしてくれ、再び任せてもらえるので、失敗を踏まえて学んでいける。
グラブ作りをメインとしながらも、今では生産の管理や他の人のスケジュール管理、材料調達まで任せてもらっています。
納期や材料費まで全体を把握できることで、グラブ作り以外のところでも成長していける達成感があります。
社長はとにかく優しくて、何でも言いやすい環境を作ってくれる。うまくいかないことがあったら都度相談をさせてもらうことで、早く問題を解決できたり。
よく親に言われるのは、20歳で社長に直接ものを言うことはなかなかできないということ。若い人の意見まで取り入れてくれて、時にはグラブ作りの知識で頼ってくれるのがうれしいですね。
趣味の延長線上の仕事だからこそ夢中になれる
今後の夢や目標はありますか?
「両角が作ったグラブなら間違いない」と言われるようになりたいです。
たとえば自分の刻印が入ったグラブなら1ランク上で売ってもらえたり、注文が入り続けて生産が追いつかないぐらいにしていきたい。
そう考えているので、会社としての残業はないけれど、自ら業務時間以外でも仕事に取り組んでいます。仕事は趣味の延長線上みたいなものなので、常に趣味をしているという感覚。
新しいグラブの型を作ったり、既存の型をどうしたらもっと良くなるかというのを考えてデータを触ったり。好きだからこそ、仕事もプライベートも関係なく夢中になれるのかなと思います。
いち早く情報を得て、より上にもっていくためには、会社や自分の名前を知られていくことも必要です。業界の中でも価値を高めていけたらと思っています。
高校生のころにやっておけば良かったということはありますか?
礼儀作法が一番ですね。
お客さまが会社を訪問された際にお茶を出すのですが、お茶を出す前に指導してもらえるものの、失礼がないか緊張します。
言葉遣いは周りの人が優しかったというのもあり、迷惑をかけたことはありません。ただ先輩方の立ち居振る舞いを見ていると、まだまだというのを実感します。
ミスをすることでかわいがってもらえたり会話がはずむこともあるけれど、皆が皆そうではなく、マナーに厳しい方もいらっしゃるので。
高校生のころは「自分は職人になるから勉強は必要ない」と思っていました。でも何を作るにしても計算が必要になってくるし、パソコンの中で管理をしていかなくてはならない。
“この勉強は必要ない”と決めつけず、高校生のうちにいろいろなことを身に付けておくと良いと思います。